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(仮称)身近な人にインタビュー企画、第2弾をお送りします。
一般企業で会社員として働く一方、2019年にジェルネイル講師として講座を立ち上げたMさん。現在は仙台市内にあるご自宅で、定期的に講座「誰でも出来ちゃう!簡単・指先美人」を開催しています。
Mさんとは数年前に某ライター養成講座で知り合って以来、主にSNSを通じてやり取りをしていましたが、「どうして突然ジェルネイルの先生?」と疑問を感じていた筆者。
この度数年ぶりにお会いする機会に恵まれたので、ぶっちゃけインタビューにご協力いただきました。
学生時代から憧れていた職に就いた後に知った現実、そして転職。「人間関係が上手じゃない」と語るMさんが、ネイル講座を始めた理由とは?
憧れだったアパレル職の現実
――現在はどんなお仕事をされているんですか。
Mさん(以下、M):事務員です。マンホールや排水口の蓋なんかを作っている会社に勤めて、5年目になりました。
――以前、アパレルのお仕事をされていたと伺いました。
M:はい。高校生の頃から服飾関係の仕事に就きたいと考えていたので、短大卒業後にアパレルの会社に入社しました。
女性向けの服を扱っているブランドで、お客様は高校生から6、70代くらいの方までいらっしゃっていましたね。わりとゆったりめのサイズ展開だったので、年配の方でも着やすいデザインだったんです。
――憧れだった職業に就かれたんですね。
M:そうですね。でも、現実はそれほど甘くなくて。
毎日、家に着くのが夜中の2時か3時。残業もつきません。そのうえノルマもあるし、お店に出るときの服は買わなきゃいけないんです。
――ショップ店員さんの服って買取りなんですね……
M:会社によって違いますね。貸してくれるところもあるし、べつに自社製品を着なくていいよってところも。でも私が働いていた会社では、お店で着る服は全部買取りでした。
一応、社員割引はありましたが、買う量が多いので金銭的に追いつかないんです。自宅のクローゼットに入りきらないくらい服が溢れていて、友達にあげていたほど。
しかも、店頭からなくなった服を着てはいけないという決まりがあって。
――「その服、どこで売ってるの?」ってお客さんに聞かれたら困るから?
M:そうです。売れ筋商品を買うとすぐになくなっちゃうし、逆に売れなさそうな服はお店から下げちゃうから、これまた難しくて。
結局、ちょうどいいのを見極めて買うか、短期間だけって割り切るかのどちらかになっちゃう。もちろん、昨年の製品を着るのもNGです。
――思っていたよりずいぶんと厳しい世界です……。
M:私自身、体力的にも金銭的にも精神的にも厳しくて、長くは続けられないなと感じていました。そういう状況なので、離職率もすごく高かったですね。アルバイトの若い子が定着しなくて。
人がどんどん辞めていくから、入社後半年で教育係をやらせられるし、1年経ったらもはやベテランの域でした。
このままいくと店長にさせられそうだし、そうなる前に、と辞めることを決めました。実質、勤めていたのは2年くらいでしたね。
――そこから事務の仕事に方向転換されたんですね。
M:休みが決まっている仕事がいいなと思って、それなら販売職じゃなくて事務職かなと。アパレルの後に歯科や行政書士事務所など何社か転々とした後に、今の職場に落ち着きました。
――やっと良い職場に巡り会えた、という感じでしょうか。
M:それがまたちょっと、いろいろとありまして……(笑)
休みも決まっているし有給も取れるしボーナスも出るし、待遇面では今までの職場の中で一番良いんですが、ここにきて人間関係の問題が出てきちゃいまして。
――ああ……あるあるなやつだ。
M:きたきたきたー! これが、世に聞くお局様というやつか! と(笑)。
お局様の嫌がらせに耐え続け、5年目を迎えました。
自分にとっての「特別じゃない」は、誰かにとっての「特別」かもしれない
――セルフネイルの講座を始められましたが、以前からネイルはやられていたんですか?
M:いいえ、全然。
私、子どもの頃から20年以上、爪を噛むクセが抜けなくて、深爪がひどかったんです。イライラすると無意識のうちに噛んじゃったりで、爪先の白い部分がないのが普通だったんですよ。
――そこから、ネイルに興味を持つきっかけは何だったのでしょう?
M:今の仕事を始めてから、パソコンを打つときに自分の爪が目に入るようになったんです。そのときふと、「おもしろくないなあ」って感じたのがきっかけでした。
もともと短大のとき、ネイルの授業を週に1回受けていたんですね。アパレルに興味があったので、少しでもおしゃれや服に関連しそうな授業を受けておけば、将来的に役立つかなって。
内容は、プラスチックのチップにマニキュアを塗るような簡単なもので。今振り返ると興味深い内容だったなと思いますが、当時はめんどくさいって気持ちが強かったですね。
でもその経験があったから、ネイルについて多少の知識はあったんです。
――ここでアパレルが生きた……! パソコンを打つときに気になるようになってから、自分でやってみようと思ったんですね。
M:はい。安いジェルネイルのセットを買ってきてやり始めました。でも人にやってあげようって発想は全然なかったです。
例えばディズニーランドに行くときとか、お休みの日に普段はできないデザインを楽しめればいいかなって。母や姉がそれを見て褒めてくれて、嬉しかったですね。
――楽しそう! 手先が器用なんですね。
M:いえ、自分を器用だと感じたことはなかったんです。アクセサリー作りをしている姉を見て、「すごいなあ」「今から器用になるのは無理だよなあ」と思っているくらいでしたし。
――お姉さんもすごい! そこから、人に教えるに至ったのはどうしてでしたか?
M:ネイルサロンに行ったこともあるんですが、ちょっと敷居が高いんですよね。やっぱり高いので頻繁には行けないし、仕上がりに満足できなかったとしても言いにくい。
私がそう思うんだから、他にも同じように思っている人がいるだろうなって思ったんです。
――わかります。わたしもネイルサロンとは縁がありません。
M:でも、ジェルネイルに使う道具なんてそのへんのドン・キホーテにも売ってるし、サロンに行くほどお金もかからないし、ちょっと欠けても自分で直せる。
私自身やってみたら、「へたくそだけど、できないことはないな」って。
何を血迷ったのか、ネイリスト技能検定という資格まで取っちゃいました。2級以上は学校に通わないと無理なレベルなので、3級止まりですが。
そうやって自分ひとりで楽しんでいたら、あるとき姉に「私にもやって」と頼まれたんです。
――アクセサリー作りをしているお姉さんですね。
M:そうです。そのときは、「やるのは良いけど、自分でできた方がいいんじゃない?」って言いました。でも、できないって返されて。
いやいや、普段あんなに細かい作業して作品を作っている人が、何を言っているんだろうと思ったんですけど。
――確実に手先は器用なはずですもんね。
M:それで、自分にとって特別じゃないこと、特技とは思えないようなことでも、他人にとっては特技といえるのかもしれない。そう思ったんです。
――案外、自分の特技ってわかりにくいものだと思います。
M:そうなのかもしれません。そこで初めて、講座をやってみようかと思い立ったんです。
プロ級の仕上がりはごめんなさいだけど、ネイルをきっかけに知り合いやお友達が増えたら楽しいだろうなって。
年代、性別問わず参加できる、和やかな雰囲気
――講座のタイトルは「自分でできちゃう!!簡単・指先美人」ですね。具体的に、どんなことを教えているのでしょうか。
M:爪のケアや、色を綺麗に見せるちょっとしたコツ、ジェルネイルの塗り方などをお伝えしています。
ワンポイントアドバイスをしたうえで、1本か2本自分で塗ってもらって。頼まれれば私もお手伝いしますし、あとは参加者さん同士で指を交換して、お互いの指に塗ってみるというのもやっていますね。
ワイワイと和やかな雰囲気です。
――開催頻度は。
M:2週間に1回、土曜日に自宅で行っています。
――必要な道具などはどうしていますか?
M:ジェルを硬化させるのに使うライトと、ジェルネイルは私の私物を使っていただいてます。
やすりや甘皮処理用のスティックなどのケア用品代は参加費(500円)から賄っていますが、物は事前に用意しておいて、当日お渡ししています。
――じゃあ、手ぶらで来ても大丈夫ですね。
M:そうですね。ほとんど皆さん、手ぶらで来られます。もちろん、自分で使いたいものがあれば持ってきてもらってもOKです。
ジェルネイルの敷居が高いって思われる大きな理由のひとつが、手始めに道具を揃えなくちゃいけないことなんです。費用がかさむって思われがちなんですね。
でもケア用品など最低限の物は、100円ショップで揃っちゃうんですよ。
――それなら気軽に始められますね。参加者はどんな方が多いですか?
M:実は私がFacebookで講座のお知らせを出したとき、最初に申し込んできたのが母だったんです。これまでネイルに興味なんてなかったはずなのに「本当に、不器用な私でもできるの?」って。
で、やってみたら職場の人たちに「いいね」って褒められたのが嬉しい、楽しいって言っていて。
――お母さん、本当に嬉しかったんでしょうね……!
M:とまあ母は置いておくとして、あとは本当にバラバラで。若い女の子もいれば、20代・30代の女性もいるし、あと男の子も来てますよ。
――男の子がジェルネイルの講座に?
M:はい。弟の友達なんですけど、指がすごく綺麗な子で。
なのに爪がガタガタでもったいなかったから、「整え方くらい知ってても損はないんじゃない?」って声をかけたら、参加してくれました。
――男の子は色を塗るんじゃなくて、ケアだけ?
M:塗ってもその場ですぐに落とせるので、どっちでもいいよって。そうしたら、「せっかく来たので塗ります」って言って、みんなと一緒に色塗ってました。
指だけは本当に綺麗な子なんです。指だけイケメン。
――「指だけ」強調しすぎじゃないですか(笑)
M:いや、だって、本当なんですよ。(写真を見せてくれる)
――(あ、本当に指が綺麗)
ネイル講座を通じて、人間関係を豊かにしたい
――講座の件はFacebookで見て知りましたが、集客はどうしているんでしょう。
M:今のところ、FacebookとLINEのタイムラインですね。あとは、会ったときに口頭で伝えたり、知り合いに連絡してみたり。
でもなかなか難しいですね。興味はあるけど日程が合わない、とかもよくありますし。
――とりあえずは、知り合いに声をかけて……という感じですね。
M:そうです。集客は難しいし今後の課題でもありますが、別にこれを仕事にしているわけではないので、焦りは特にありません。
あくまでも、この講座を通じて普段あまり会えない人たちと仲良くなれたら嬉しいな、というのが主軸なので。
――人脈とか、人間関係を広げたいっていうのがメインですものね。
M:そう。七尾さんと初めて会った某ライター養成講座も、それが目的で参加したんです。話のネタになればとか、誰かとつながれればいいなとか。
――なつかしい! 思えばわたし達も不思議なご縁ですよね。
M:文章って書かないとうまくならないし、ネイルもやらないとうまくならないじゃないですか。私、話すのも人間関係もあまり上手じゃないので、人と会って喋ってもっと上手になりたいし、新しい発見がしたいんです。
人間関係は一生ついてまわるものだから、いろいろな人脈があればいいだろうなって。
だから今後もネイル講座は続けるつもりです。
ネイルに興味はあるけどできない、やったことがないって人の力になれたら嬉しいし、何よりお友達が増えて人間関係が豊かになれば、今よりもっと楽しくなるだろうから。